AI 時代にエンジニアが本気を出さないわけ
はい、どうもこんにちは佐藤です!
今回は、AI により業務効率化ができるようになったのに、エンジニアがそのような行動を起こさないのは何か? って話をしていきますね!
現場にいると、ものすごく不思議に見えませんか。ツールは揃っています。使えば速くなることも、もうみんな知っています。それなのに、腰を上げない。サボっているわけでも、能力が足りないわけでもありません。
それはズバリ、報酬が労働になってしまったり、搾取が発生するからです。
順番に書いていきますね!
5 万の色付けに対して、昇給は 1000 円だった
先日、SES をしているエンジニアの大先輩に会いました。
派遣先が 5 万ほど色をつけてくれている契約をしているのに、本人には 1000 円しか昇給していないと、愚痴をこぼしていたのです。
もちろん、会社側の言い分はわかります。SES なのでリスクと若手への還元を考えないとなりませんよね。案件が切れたときの待機コストもありますし、育成中の若手は単価より人件費が高くつきます。だから、そのような運用になってしまうのは理解できるのです。
でも、それはあまりにもなのではないでしょうか?
大事なのは金額の多寡ではありません。評価されたという事実が、金額の形でほとんど届いていないことです。派遣先はちゃんと価値を認めて、契約に 5 万を乗せてくれました。その信号が、本人の手元に届くまでに 1000 円まで減衰しているのです。
どんなに効率化しても、労働の報酬が微々たるものとなってしまう。これはもう、搾取なのではないでしょうか。
こういう経験を一度すると、人は次から本気を出しません。当たり前です。
効率化の報酬が、金ではなく「仕事」で支払われる
もう一つのパターンがあります。こちらのほうが厄介です。
AI により業務が効率化したことによって、報酬が労働になってしまうことがあるのです。これは私が経験あります。
AI によって業務を効率化したところ、近隣領域の仕事が振ってきてしまって、割に合わないなぁと感じることが多くなりました。
考えてみてください。3 日かかっていた実装が 1 日で終わるようになったとします。浮いた 2 日はどこへ行くでしょうか。自分の裁量で設計に回せるでしょうか?
回せません。空いた 2 日には、隣のチームのタスクが入ってきます。
しかも困ったことに、近隣領域の仕事というのは、たいてい前提知識のコストがかかります。ドメインを覚え直して、関係者を把握して、既存の実装を読んで……。効率化で浮かせた時間より、立ち上がりのコストのほうが大きいことすらあるのです。
報酬が現金ではなく、仕事という現物で支払われている状態ですよね。しかも為替レートはこちらに不利です。
今では AI の並列稼働による 2 案件同時稼働は行わないようにして、最低限を行うようにセーブしています。これは手を抜いているのではありません。釣り合わないレートでの両替を断っているだけです。
なぜこうなるのか。人月は「時間」を売る契約だから
ここは構造の話なので、少し丁寧に書きます。
SI や SES の契約は、突き詰めると時間を売っています。人月単価というのは、そういう単位ですよね。成果物ではなく、拘束された時間に値段がついているのです。
すると、こうなります。
- 10 の仕事を 10 の時間で終える → 10 の請求
- 効率化して 10 の仕事を 5 の時間で終える → 5 の請求
効率化した側が売上を減らす、という奇妙な計算になってしまうのです。だから空いた枠は必ず別の仕事で埋められます。埋めないと売上が落ちるので、これは担当者の悪意ではなく、契約の形が命じていることなんですよね。
「じゃあ請負なら?」と思いますよね。請負なら効率化した分は利益になるはずです。ところが次の見積もりで「前回それだけ速かったですよね」と単価を削られます。効率化の成果は、一度きりのボーナスとして吸い上げられて終わりです。
つまり、現場のエンジニアが本気を出さない理由は、意識でも文化でもありません。インセンティブの設計がそうなっているからです。
意識改革の研修をいくら重ねても、ここは動かないでしょう。
だから、業界の AI 革新は思ったよりゆっくりになる
ここから予測を書きます。
おそらく、業界的には、AI による革新的な動きは思ったよりゆっくりになるでしょう。報酬とやったことが釣り合わない状態がしばらくは続くので。
SNS を見ていると、明日にでも全部が変わるような空気がありますよね。でも現場の変化は、技術の性能ではなく契約と評価の更新速度で決まります。契約は年単位でしか変わりません。評価制度はもっと遅い。
業界がゆっくりと業務効率化をするのに合わせて、効率化していくのだと思います。
これは諦めの話ではなく、期待値の調整です。組織の中で AI 推進の旗を振って、一人で燃え尽きる人を何人も見てきました。旗の振り方が悪いのではありません。報われる仕組みがまだ無いところで振っているだけなのです。
一歩先を行くなら、個人でスキルを高めるしかない
では、一歩先をいくにはどうしたら良いのか?
個人でスキルを高めるのが最も良いと思っています。
組織で動いたら損をする。でも、個人で動けば、動いた分報酬につながる可能性があります。この差は決定的ですよね。組織の中での効率化は、時間の余白を作った瞬間に誰かに回収されます。個人の技能は回収されません。
このサイトのプロダクトは毎朝と家事の合間にプロンプトを打って開発する、家事駆動開発です。洗濯機を回している間に 1 プロンプト、コーヒーを淹れている間に差分を確認して、という進め方。まとまった時間なんて一度も取っていません。
それでも個人でここまで行けてしまいます。
ここで大事なのは、同じ AI の使い方でも、置き場所によって報酬がまったく違うという点です。組織の中で使えば近隣領域の仕事に化けます。自分の手元で使えば、技能と資産として積み上がるのです。
だったら、どちらに全力を置くかは、もう決まっているのではないでしょうか。
まとめ
というわけで、報酬と見合わない効率化はセーブしろ! って話でした!
あ。正確には、効率化する場所を選べ、って感じですねっ。
手を抜けという意味ではありません。時間を売る契約の中で生産性だけを差し出しても、返ってくるのは 1000 円の昇給と、隣の領域の仕事です。それを何度か経験して本気を出さなくなった人を、私は責められません。
エンジニアよ、報酬と見合わない効率化はセーブしろ。でも、裏ではしっかりと個人の技能を伸ばせ!
業界が追いついてきたとき、いちばん強いのはそこで手を動かし続けた人ですから。
20代で就職失敗しても、腐らずに個人で副業をして技術を磨いて、ここまできた私が保証します!