AI で伸びるのは、もともと強いチームだけだ
はい、どうもこんにちは佐藤です!
先日、AI DevEx 2026 に行ってきました。「AI 時代の開発組織の生産性を紐解き、未来を探る」がテーマのイベントですね。
その中で、DMM さんの発表がずっと頭に残っています。
今までテストコードを書いていたような完成されたチームは、AI を使うと、そうでないチームに比べて生産性が上がっていた。
……うわぁ、と思いました。
素直にいい話として聞けなかったんですよね。なぜかというと、私は テストコードをあえて書かない という選択をしたことがある人間だからです。
今回はその話を書いていきますね!
私は「テストコードを書かない」と決めたことがある
もう何年も前の話になります。
当時、周りを見渡すと、テストコードが放置されて、エラーまみれになっているプロダクトが散見されていました。ビルドを通すために特殊な手法を取らないとならない、という状態のものまであったのです。
テストが真っ赤なまま放置されると、何が起きるかご存知でしょうか。
誰もテスト結果を見なくなります。
赤いのが日常になって、本当に壊れたときの赤がその中に埋もれる。落ちたテストを直す文化がないので、次の人は落ちたまま追加する。やがて「あれは昔から落ちてるやつだから」という口伝だけが残ります。品質を守るための仕組みが、品質を守っているフリの装置に変わってしまうわけですよ。
だから私は、チームの実力を見て、これならばないほうが良いと考えて、あえてなしにしました。
回せない仕組みは、無いよりも悪い。この判断そのものは、今でも間違っていなかったと思っています。
ただ、そのシステムは何億の規模に育ってしまった
問題はこの後でした。
結果的に、何億ものシステムに成長してしまったのです。
小さいうちに決めたことが、大きくなってから効いてくる。あの頃に無理をしてでもテストを書く文化を作っておけば、と後悔もしています。
ただ、どうしようもなかったのだなぁ、とも思うのです。当時のチームでテストを必須にしていたら、そもそもリリースまで辿り着けていたでしょうか。ドキュメントもテストも完璧にして、納期に間に合わずに全部消える。そういう案件を、私たちは何度も見てきましたよね。
**その時々で、選べる手は限られている。**後悔と、どうしようもなさは両立します。
AI 時代には、この判断が通用しない
ただ、AI 時代には違うでしょう。
DMM さんの資料でも、AI 導入でテストコードを書くようになったという話がありました。
実際にテストコードと AI の相性は良いです。もはや必須とも言えるでしょう。
理由は単純で、AI は「自分が書いたものが動いたかどうか」を確かめる手段を、自分では持っていないからです。テストが無い状態で AI に書かせるのは、目隠しで運転させるようなものですよね。
以前 AIがコードを書く時代にコードレビューは不要 で、コードを読まなくても信頼できる仕組み、つまりハーネスの話を書きました。テストはその中核にあります。人間がレビューで担保していた安全性を、AI 時代はテストが肩代わりするわけです。
つまり、昔は「テストを書かない」で逃げ切れました。今は逃げた瞬間に、AI の恩恵から締め出されるのです。
でもそれは、猛者が揃っているからできる
ここが、今回いちばん書きたかったところ。
これは猛者が揃っている DMM さんだから、という側面もあると思うんですよ。
AI を使用して、仕組みから変えて、効率化するためには、チームのスキルアップが必要になるのだろうなと。
AI 導入というと、ツールを配る仕事に見えますよね。ライセンスを買って、使い方の勉強会をして、はい導入完了、と。
でも実際は違います。テストが書ける。CI が落ちたら直せる。設計を言葉にできる。この土台がないチームにツールを配ったところで、何も起きません。むしろ、誰も検証できないコードが大量に増えて、状況は悪化します。
強いチームは AI で加速する。弱いチームは AI で負債が増える。同じツールを配ったのに、結果が逆を向くのです。
これからの世の中は残酷だ
だから、これからの世の中は残酷だと思っています。
できる人で作ったチームが、指数関数的に他と差を広げてしまう。
しかもこの差は複利で開きます。強いチームは AI で時間を作り、その時間をさらに仕組みへ投資する。次の周回では、もっと速く回る。弱いチームは検証できない負債の始末に時間を取られて、投資に回す余力がそもそも残りません。
では、開く側に入るにはどうすればいいのか。より多くの時間を、学習に費やすしかない。
……そしてここで、私は自分が書いてきたことと衝突します。
このブログでは エンジニアの成長に一番必要なのはライフステージを進めること だと書きました。残業を重ねるな。土日を削るな。まず人生を進めろ、と。
でも、指数関数的に開いていくチームの側に入るためには、学習に時間を注ぐ必要がある。矛盾してしまうんですよね。
AI 時代にエンジニアが本気を出さないわけ では、組織で動いても報われないのだから個人の技能に投資しろ、と書きました。その投資に回す時間を、いったいどこから持ってくるのか。人生を進めるための時間を削って、でしょうか。
難しい世の中です。
まとめ
というわけで、AI で伸びるのは、もともと強いチームだけだよ! って話でした!
解決策や提案は、何もありません。
こういうときに、それらしい 3 ステップの処方箋を書くこともできます。でも、自分でも腹落ちしていないものを書いても仕方ないですよね。テストを書かないと決めたあの日から、私はまだこの問いの答えを持っていません。
ただ、問いを抱えたまま走ることはできます。それを探求して、次の世代が楽しく生きられるようにするのが、私たちの任務かなと思っています。
襟を正して、研究しますよっと!